ビーコン、雪崩捜索の権威、マニュエルさんとのトレーニング


Mammut Pulse Barryvox

本日は、マニアックな話なので、雪崩ビーコン、特にマムートPulseに興味のない方は、そーとこのページを閉じちゃって下さい。

ガイドはこんなマニアックなことを知識として持っておきながら、実際の雪崩現場で他の人間を指示しながら、埋没者サーチテクニック、プローブテクニック、シャベルテクニックを駆使して掘り起こし、もし生きていれば、ファーストエイドを施しつつ、容態に寄ってレスキュープランを変えていきます。

容態の見極めは、ファーストエイド。自分はスキーパトロールを7年間やっており毎日のように使っているので得意分野ですが、医者じゃないので使わないと廃れるのがファーストエイド技術。
これも、日々復習してないとですね。



いやー、本当に大変です。でもこれがガイドとしては安全確保のためのベーシック。これが最低限のことなのです。

ちなみに、埋没者サーチテクニック、プローブ、シャベルなども、今回と同じぐらいの文量に軽くなります。そう、これが最低限です。

さあ、こっから本文です。

2012年11月29日から12月4日間の日程で、カナダのキャットスキー会社、チャッタークリークのガイドトレーニングに参加してきました。

トレーニングの様子は、別途ブログにアップしたいのですが、まずは備忘録的にまとめておきたいトピックが、このビーコン。

カナダのメカナイズドスキー(キャットやヘリなどのマシーンのアシストを受けるスタイル)オペレーションは、機器のメンテナンス、お客さまに案内する操作方法の統一、という観点から、全員が全て同じアバランチ・ビーコンを使用しており、そのビーコンで多くの会社が使用しているのが、マムートのPulseという機械になります。チャッタークリークでも60台ぐらい所有。最大手CMHなんかになると、会社で数百台は持っているでしょうね。

つまり、カナダは右も左も、皆このビーコンです。

個人的には他の会社のビーコンをしっかり使い込んだことがないので、甲乙は付けれないのですが、
ひとつ言えることは、このビーコンは、必要最低限以上の機能を取り入れてあるので、とりあえずこれが使いこなせればOKということです。

この使いこなすという部分ですが、いやー奥が深いです。
ビーコンサーチテクニックの前に、いろんな機能がついているので、まずはそれを覚えないといけないとうこと。

そして、今回トレーニングをしてくれた、スイスのマニュエル氏。彼は、今まで発売されたビーコンの多くに研究開発として携わっており、まさにビーコンの権威。もちろんこのPulseにも深く関わっています。

マニュエル氏。
PulseはWifiで設定を変更できます。最大約90台!
フィールでもちょっと設定変えますので、ちょっと皆出してー、ってPC出してました(笑)


プラス、バックグラウンドは地質学も加わっており、ビーコンを使用しての、雪崩救助方法全般の専門家なのです。

世界各地を色々飛び回っており、毎年来るカナダの日程に合わせて、チャッタークリークでも丸々2日間、トレーニングをしてくれました。

かなーり強いアクセントのある英語+専門用語で、起きているのがやっとの中、特に勉強になった所を、忘れぬようにメモっておきます。
基本的な操作は、他の色々なサイトが取り扱っているので、そこを参照して下さい。

1. モードはアドバンスモード
マムートのPulseにはBasicモードとAdvancedモードがあり、もちろんガイドはAdvancedモードを使用。
モートの切り替えは、Profileからできます。Profileへの行き方は、マニュアルを参照して下さい。
Advancedモードに行くと、Settingが選べるようになり、ここでマニュエル氏おすすめのSettingにしました。
詳細は、下記に。

こでAdvancedを選択


2.Analog ModeはManualに。
手動でアナログモードに行く事ができます。

設定画面。Manualとなっていることを確認。

アナログモードの利点は、受信範囲を広くできること。最大80mになります。
ヘリやキャットでお客さんがツリーウェルと言われる、木下の穴に落ちることがよくあります(実は雪崩よりも死亡事故が多いです)。この際にもこの最大受信モードで探します。

なので、大規模な雪崩で、捜索開始地点でシグナルがゲットできない場合は、すぐにマニュアルモードへ。受信レンジはA9(ディスプレイ上はA8が最高だが、もう一回クリックするとA9に入る、表示はなし)

右のA8が受信感度。右のボタンを押すと更にA9にいける。
画面表示のA9はなく、何も映らなくなる。

また、何かしらの理由でデジタルモード(Standard Seach)が使用できない場合は、昔のようにアナログモードにして操作できるようになります。

3. Audio SupportはOff
これは、埋没者に近づくと、勝手にピピピピって音が大きくなるモードです。
実は、これをONにしている人は多いのでは?
マニュエル氏は、絶対にNOと断言してました。自分で作ったのでは?と思いながらも、理由を聞くと納得。
一人のみの埋没者であれば、どんな設定(Basicモードでも)OKだが、複数になった場合、これがあるとアナログの音が消えてしまうので、見つけにくくなるということ。
うーん、文字で書くと説明しづらいので、是非とも雪崩講習に参加して下さい(笑)。

一応文字で説明を頑張ると、デジタルモードでも絶えずアナログ音が聞こえています。埋没者に近づけば大きくなったり、複数入ればその数のぶんピッピと聞こえたりします。

ビーコンサーチのテクニックとして、
埋没者に近づく際に、ディスプレイが10mになった時に”サウンドチェック”と言って、アナログ音が何個聞こえるかを確認すれば、音の大きさで付近に何人が埋まっているかがすぐに分かるので、このサウンドチェックを10m、5m、3mで行います。

457Mhzという同じ周波数を使っている以上、発信の間隔が全く同じになる瞬間があります。その時ディスプレイ上はStand Still(日本語だとチョットマッテみたいなメッセージ)になってしまいまい、何もできなくなります。ただ、ビーコン的にドリフトと言ってちょっとずつまたずれるようにできているので、そのうちStand Stillは解消されますが、画面より先に、音はすぐに分かれてくれるので、捜索のスピードアップに繋がるというわけです。


このAudio SupportはOffへ

4. Vital DataはもちろんON
この機能は、Pulse間でのみ利用できるモードです。
ビーコンはホルダーに付けて胸の近くに置いておくのですが、息をしている時の胸の微かな動きがあれば、この人は生きているよ!というハートマークを、捜索者のディスプレイに表示してくれます。

ということで、全員が同じPulseを使っているオペレーションであれば、複数埋まった場合、このハートマークがある人を優先に掘り出す、優先付けをすることになるわけです。
英語/フランス語ではTriageといい、近年の捜索の重要事項の一つです。
ある意味当たり前ですが、死体を掘りを起こすより先に、生きている人を掘り起こすということです。
雪の上からもそれがわかるようになると。

そのセンサーは、なんでもミサイルに付いている奴と同じかなり精密な機械なようです。
髪の毛よりも軽いと言っていましたね。

5. Wifiの周波数
北米は RegionB。ヨーロッパはA。日本はどこでしょう。
このWifiは上記のバイタルデータを送る周波数です。



6.Rescue Send、レスキューセンド
これはSettingからいくのではなく、サーチモードからセンドに戻る時に現れる項目です。
このレスキューセンドモードに入ると、457Mhzではない周波数になり、発信はしているけど、他のビーコンからキャッチできなくなります。
これの利点は、自分が埋没者Aを掘っている時に、他の方が埋没者Bを更に捜索をしている時。
まず、ずーと音がしないのでうるさくない、誤って通常の457Mhzに自分が戻してしまい、他の捜索者に迷惑がかかるのを防ぐ、などがあります。

レスキューセンドモードに入ってから、4分間動かないと通常のセンドに戻ります。
通常のサーチも設定によりますが、自動的に戻りますね。

捜索をしている時、つまりビーコンを服の外に出してる時に、もし二次雪崩に会うと雪崩にビーコンを持っていかれます。
なので、近い将来レスキュー隊などは2つ持つようになるのでは?と言っていました。レスキューセンドモードに入っている機械と通常のもの。
サーチからセンドに戻る瞬間に現れる選択画面。
この時にに左右のボタンをプッシュ!

レスキューセンドモードに入った画面。
入る瞬間普通と逆の音、ピッポッパ、ではなくポッピッパとなる。

7.アナログモードだけでの起動
電源Offの状態から、両方のボタンを押しながら、一気にサーチに入れるとこのモードになります。
ディスプレイが壊れた時などに使用するそうです。



8. スクロール機能の使い方
複数埋没の際、Basicモードだと、一番近い人の数字を出した後、別の埋没者に近づくと自動的に、数字を切り替えてくれます。ただ、Advancedモードは一回近くの埋没者の信号をゲットするとその信号にロックしてしまいます。これを解消するにはMark機能を使うか、スクロール機能で次の埋没者にスクロールするかしないといけません。
一人目を発見した後、別の埋没者を探しに行く時に上記のどちらかを忘れていると、一向に新しい信号をゲットできなくなるので注意が必要です。
ちなみに、マーク機能は6m以内にならないと使用できません。

今回習ったことで、ここに載せきればい項目では、
A.マイクロ・ボックス・サーチ
B.深い埋没者の際のシャベル方法
C.どこから掘り始めるかの最新情報、プローブから数M下は既に古いです。
D.埋没者のいち部分が最初に見えてからの、サイド・チャネルの掘り方
E.プロービングを始めた際に、既にシャベリングを初めてもらう場所
F.プローブ、シャベルを組み立てるタイミング

他にもあった気がしますが、もう忘れました(涙)

ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。恐らく誰もいないと思うのですが、もしいたらコメント残して下さい。励みになります。
では、安全に冬山を楽しみましょう!!